私たちは何を拠り所にしているのでしょうか2021年05月13日 01時08分51秒

<お知らせ>5月研究会は休会とします。

「専門家の意見を聞く」ということばは便利ですね。昨年からはメディアや政治の世界でもやたらと多く使用されていますが、「専門家」とは何か、「専門家の意見を聞く」ということはどういうことを意味するのか、日頃の暮らしの中でもよく使われているようで、そもそも、それは人々の行動にとってどのような意味をもつのか、考えてみるといろいろなことが見えてくるのではないでしょうか。

ふり返ってみると、ケアマネジメントの世界でも「専門性」が声高に言われるようになったのは制度開始からではなく、しばらくしてからでした。ソーシャルワークの世界で「専門性」が大きくいわれるようになったのは、そんなに過去の話ではありません。他の学問分野ではあまり問われることがなかったのですが、「専門性」は「専門」とは異なり、臨床に関わる職業と結びついた領域で多く言われるようになったと思います。「社会福祉の専門性」が日本で語られるようになったのは、「社会福祉とは何か」という理論を巡る大論争が落ちついた頃(45年位前)からでした。その後、「社会福祉原論」という大学での科目名が無くなっていき、「社会福祉援助技術論」という「各論」での科目名が「ソーシャルワーク」に置き換わっていくのを見てきて、「専門性」とは何かを度々質問され(研究者などからも)てきました。
そのときは、「制度的専門性」という用語を造語して説明したこともありましたが、「専門」ということばに対して、「専門性」ということばの響きに何となく魅力を感じている(?)人(関係者)、あるいは、具体的に(理論的に)説明できない人が多いことにも深く考えることがありました。
「専門性」ということばを口にするとき、職業属性に基づく自己の「専門性」とは何かをロゴス (λόγος logos ギリシャ語 「ことば」、Logical Thinking(ロジカルシンキング 論理的思考)の基である単語)で表現できるかどうかは重要なことと考えます。
「専門性」をどのように表現するのかということについて、「○○できること」のように説明するのであれば、熟練した行為を行うこととどこが異なるのか、いわゆる素人とどこが異なるのかなど、ますます説明がつかなくなってしまわないでしょうか。
「専門性」はそもそも排他性の性質を持っています。「他者とのちがい」を強調するあまりに我田引水の説明をしてしまったら、却って「専門性」を否定されかねません。
「職」としてその業務が行われるのであれば、「職」が確立していることを前提に、その人自身がその「職」をどの程度「極めているか」ということになります。

「専門」「専門性」ということばを使うということは、自分が何も知らなくてよい、知らないことを正当化する、自分が判断する根拠に対して責任を伴わないなどが理由として挙げられます。
知ることは考えるために不可欠であり、考えることは判断に不可欠です。
対人援助における専門性とは何かを考えると、いろいろ具体的な行動なども思い浮かび、それらについて説明することもできますが、私は、「区分して特定分野を掘り下げるのではなく、区分された各分野からであってもクライアントへのアプローチにあたって関連性、相互作用性をとらえて、クライアントの行動に結びつける」総合的な、包括的な能力が「他とのちがい」といえるのではないかと考えています。

対人援助に関して、私は「ミッション」ということばよく使います。ミッション(mission)は使命とか任務と訳されますが、他にも、派遣、宣教・布教(キリスト教系の学校を「ミッションスクール」というように)の意味があります。使命とか任務というと義務感を感じる人もいますが、何を為すかという自発性と「メッセージを伝える」ということが基礎になっています。キリスト教のミサなどでは最後に「行きましょう、主の平和のうちに」(教派によって異なりますが)など司式者が言うのも、「何を為すか」ということを相互確認する行為といえます。
対人援助に関わる人々が「自分は何を為していくのか」と常に自己認識して考え、行動することがとても重要で、その行動をとおして人々にメッセージを伝え、ともに人々の平安を実現することになると考えています。

<お知らせ>
5月は私たちをとりまく情況の変化について不安定ですので、「休会」とします。「判断に迷うときは実行しない」というのが私の基本姿勢なので、ご理解くださるようお願いします。

6月以降は、次の日程で研究会を開催予定にしていますが、情況により中止(休会)することがあります。
皆さん、直前の連絡も含めて、確認してください。

<2021年6月研究会>
日時: 6月19日(土)13:30〜16:30
会場: 名古屋国際センター 第2研修室(3階)
<2021年7月研究会>
日時: 7月17日(土)13:30〜16:30
会場: 名古屋国際センター 第2研修室(3階)
<2021年8月研究会>
日時: 8月21日(土)13:30〜16:30
会場: 名古屋国際センター 第2研修室(3階)
<2021年10月研究会>
日時: 10月2日(土)13:30〜16:30
会場: 名古屋国際センター 第2研修室(3階)
<2021年11月研究会>
日時: 11月6日(土)13:30〜16:30
会場: 名古屋国際センター 第2研修室(3階)
<2021年12月研究会>
日時: 12月11日(土)13:30〜16:30
会場: 名古屋国際センター 第2研修室(3階)
<2022年1月研究会>
日時: 1月15日(土)13:30〜16:30
会場: 名古屋国際センター 第2研修室(3階)
<2022年2月研究会>
日時: 2月19日(土)13:30〜16:30
会場: 名古屋国際センター 第2研修室(3階)